2013年9月17日火曜日

タウナギ (Monopterus albus)

魚類
原産地:東南アジア、東アジア
捕獲難易度:★★☆☆☆



田鰻と書いてタウナギである。
魚類ではあるがウナギとは縁もゆかりも無い。

中国・台湾ではごく一般的な食用魚となっている。

日本本土のタウナギは外来種であろうと言われているが、移入経路と時期は明らかでないようだ

なお、琉球列島産の個体群は産卵生態も大きく異なり(外国産は口内保育で琉球産は産みっぱなし)、
近年のゲノム解析による研究ではついに在来のものであることが明らかになっている

一説では朝鮮半島から奈良へ持ち込まれたのが本土産個体群の起源とも言われており、
それを裏付けるかのように奈良県を中心とした関西地方に多い。
田んぼにもいるが、その周囲の用水路を回った方が見つけやすいし捕りやすい。 

捕獲は非常に簡単である。
まず夜間に生息地の田園地帯へ出向き、用水路をライトで照らして回る。
水深5~20cm程度で流れの緩い場所に多く、底に這いつくばっているので網で掬うだけである。

ライトで照らそうが至近距離まで近づこうが逃げないほどどんくさい。
なので見つけることができれば捕まえたも同然である。



しかしこのタウナギ、つくづく常識知らずな魚である。
ヒレがほぼ無い上に、



鰓も一見どうなっているのか分からない。
しかも空気呼吸が可能で泳ぎが下手くそ。
小走りで追いつける川魚は初めて見た。

ちなみに前述の通り小さな網があれば楽々捕まえられるが、もっと工夫して捕まえたいという酔狂な方は釣りでも狙える。ただし見釣りだが。

水の振動に敏感に反応するので、エサは動けば何でもいい。
死んだエサでも眼の前で動かせば即食いつく。なんならルアーでもいい。

極論を言うとこんな仕掛けでも釣れる。



指サックは怪我防止のため。タウナギは意外と口が小さいのでこの写真よりもハリは小さい方がよい。

指先に釣りバリを装着し、タウナギの眼前でちょこちょこと動かしてやるのだ。
すると指をエサだと思って食いついてくるので、上手くハリを咥えてくれればそのまま釣り上げられる。


 上手くいくとこんな感じで釣れる。

ただし、やや難易度が高いのであくまで物好き向け。
言うまでもなく、普通に掬うかエサで釣った方が100倍手っ取り早い。



空気呼吸ができずに溺れ死んでしまうので、活かして持ち帰る場合は容器に水を入れすぎないこと。

原産地では重用されているだけあって、食べても美味い。
身がプリプリしていて、中華風の炒め物や中華餡の具にマッチする。

ただし、残念ながら食感が違いすぎてウナギの代用にはならないようだ…。



身が赤黒いのは少々ショッキングかも。

なお、捕獲はとても簡単だが居場所を見極めるのに若干コツがいるので色をつけて★2つにしておく。

2013年9月9日月曜日

ボウ・フィッシング アメリカ・イリノイ州におけるレジャーとしてのハクレン駆除

7月に書いたハクレンの記事閲覧数が予想以上に多いことに驚いています。

だからというわけではないけれど、ハクレンのボウ・フィッシングについて少し紹介。

日本へ食用に持ち込まれ、利根・江戸川水系に定着しているハクレンはアメリカでも近年幅を利かせている。

ただし、日本とは導入の経緯が異なる。植物プランクトンを大量に漉しとって食べる性質に目をつけられ、「泳ぐ水質浄化装置」として持ち込まれたのだ。
一定の効果はあったそうだが、やはり逃げ出した個体をきっかけに広範囲に拡散して問題化(ボートに突っ込んで事故の原因になったり、値が付かないのに漁師の網に掛かりまくったりするらしい)。
現在は駆除が求められているとか。

そうした背景からイリノイ川で誕生したのがこうした動画のようなレジャー・フィッシング。





弓矢で魚を射るボウ・フィッシングという日本では馴染みのない遊漁。ハクレンの場合は船のエンジン音に驚いて飛び跳ねる習性を利用し、空中で派手に射止めることになるので人気を博しているという。

ゲームフィッシング先進国のアメリカでは、魚釣りに関しては「いかに魚体へのダメージを軽減するか」というテーマがとても活発に議論・研究され、釣り人らにも徹底して啓蒙されている。
しかし、リリース(再放流)を前提としない外来魚の駆除も兼ねるとなると容赦は無いようで、かなり強大な矢を容赦なく魚体に打ち込んでいる。

ちなみにハクレンを食べる習慣は現時点では無いようで(食おうぜ!という運動は一応ある模様)、射られたハクレンは基本的に「廃棄物」として扱われているようだ。

漁法がかなり過激に映る上に漁獲後にはこの扱いなので、国内外からの批判もあるらしい。

日本の遊漁は漁業の延長であり、「獲物は食べなければならない」という意識が強い。
しかし、古くから純粋に「魚との駆け引きを楽しむ」ことを重視するアメリカでは「食べる」という選択肢の優先順位は低くなる。
ハクレンを捨ててしまうのも、ある意味ゲームフィッシング先進国らしい処理方法と言えるかもしれない。

確かにわざわざ無理して食べなくても、この方法なら消費を考えずに駆除が出来てレジャー客も楽しめる。
一石二鳥である。合理的である。

日本でも釣れたブラックバスやブルーギルのリリースを禁じ、殺処分を義務付ける動きに
「悪いのは人間であって魚じゃないのに!」という批判が多い。
しかし僕は人間が悪いからこそ、その責を負って心を鬼にすることも必要だと考えている。
「命を粗末にするな」という感情的な意見は、かえって多くの守るべき命を犠牲にすることもあるのだ。
(もちろん子どもへの適切な説明など、人の感情面への配慮は重要だが)

…でも生き物を矢で射殺して放置っていうのは個人的にはやっぱり抵抗があるかな~。
むやみに批判こそしないけど、自分もやりたいとは思えないな~。

まあ人間ってこんなもんですよ。